1.
急性拒絶反応の全体的評価 (Banff 1997)
全体的評価 基準
不確実(RAI=2)
急性拒絶反応の診断基準を満たさない門脈域炎症細胞浸潤
軽度(RAI=3-4)
少数(<50%?)の門脈域における拒絶反応による炎症細胞浸潤で,全般に軽度で門脈域内に限局する ,
中等度(RAI=5-6)
ほとんど(>50%?)あるいは全ての門脈域に拡大する,拒絶反応による炎症細胞浸潤
高度(RAI=7-8)
上記の中等度炎症に,門脈域周辺への炎症細胞浸潤の逸出(P3)を伴い,かつ中等度から高度の中心静脈周囲炎が肝実質に広がり,中心静脈周囲の肝細胞壊死
に関与する
RAIは下記を参照のこと。理論上RAI=9はありうるが、ほとんど遭遇しない
2.
RAI
(rejection activity index, 1997) ①+②+③
①
門脈域炎症(P)
1.
門脈域の拡大傾向は目立たない,少数の門脈域に及
ぶリンパ球主体の炎症細胞浸潤
2.
一部芽球を伴うリンパ球,好中球,および好酸球を含む混合炎症細胞浸潤による,ほとんどあるいは全ての門脈域の拡大
3.
門脈域周辺の肝実質への炎症細胞浸潤の逸出を伴い,多くの芽球と好酸球を含む混合炎症細胞浸潤によりほとんどあるいは全ての門脈域が著明な拡大
②胆管の炎症性傷害(B)
1.
少数の(<50%?)胆管が炎症細胞浸潤に取り囲まれて炎
症細胞浸潤を伴う,また上皮細胞の核/細胞質比の増加など軽度の反応性変化のみを示す
2.
ほとんどあるいは全ての胆管に炎症細胞浸潤を認める。いく
つかの胆管は核の多形性,極性の乱れ,および上皮細胞質の空胞化などの変性所見を示す
3.
2に加えて,ほとんどあるいは全ての胆管に変性所
見,あるいは部分的な内腔の破壊を伴う
③静脈内皮炎(V)
1(mild/focal).
いくつかの,過半数に達しない,門脈あるいは中心
静脈に及ぶ内皮下のリンパ球浸潤
2(mild/diffuse).
ほとんど(>50%?)あるいは全ての,門
脈あるいは中心静脈に及ぶ内皮下の炎症細胞浸潤
3(moderate-severe/diffuse).
2に加えて,中等度から高度の中心静脈周囲炎*が
中心静脈周囲の実質に広がり,中心静脈周囲の肝細胞壊死に関与する
*中心静脈周囲炎は下記のようにconfluent
necrosisと炎症細胞浸潤を持って中等度から高度と判断する
④中心静脈周囲炎(PV)
不確実(mild/focal)
少数の中心静脈に及ぶ ,小範囲の肝細胞脱落を伴うが融合性壊死のない中心静脈周囲炎
軽度 (mild/diffuse)
上記の変化が,大部分の中心静脈に及ぶ
中等度(mild-moderate/diffuse)
上記の変化に加え,少なくとも一部の中心静脈周囲に融合性肝細胞脱落と軽度から中等度の炎症細胞浸潤を伴うが,架橋壊死は伴わない
高度(moderate-severe/diffuse)大部分の中心
静脈に融合性肝細胞脱落と炎症が及び,中心静脈間の架橋壊死を伴う
3.
慢性拒絶反応
早
期の変化は特徴に乏しいので見逃しやすい。晩期項目が2以上で晩期の慢性拒絶反応とする
①胆管
早期:
大半の胆管に及ぶ変性変化: 細胞質の好酸性化,核/細胞質比の増加,核濃
染,不均等な核配列,部分的にしか上皮に覆われていない胆
管50%未
満の門脈域での胆管消失
晩期:
遺残胆管における変性所見
50%以
上の門脈域で
胆管消失
②zone3:
早期: 内膜/内腔の炎症, zone 3の融解壊死と炎症,
軽度の静脈周囲線維化
晩
期: 部分的な内腔閉塞, 様々な程度の炎症, 高度(架橋)線維化
③動脈
早期: 消失<25%
晩期: 消失≥25%
④小葉
早期: 移行肝炎(spotty necrosis)
晩期: 類洞内の泡沫状組織球集積,著明な胆汁うっ滞
-----
③'肝門部動脈
早期: 内膜の炎症, 内腔閉塞を伴わない部分的な泡沫細胞沈着
晩期: 内膜下泡沫細胞による内腔狭窄,内膜の線維性増殖
①'肝門部胆管
早期: 炎症性傷害および部分的な泡沫細胞沈着
晩期: 壁の線維化
中心静脈周囲炎の鑑別手順
所見 - 診断
胆管炎症あるいは門脈内皮炎の存在
|
急性拒絶反応
|
上記を満たさず,胆管の変性・消失
|
慢性拒絶反応
|
上記を満たさず,抗核抗体の上昇(160倍以上)
|
インターフェイス肝炎があれば自己免疫性
肝炎,なければその疑い
|
上記を満たさず,門脈域炎症が中等度以上
|
特発性移植後肝炎
|
上記を満たさない (門脈域炎症がないか軽度)
|
特発性中心静脈周囲炎
|
時間
経過から見た移植肝の病変
1. 移植後1ヶ月以内に発症する病変
虚血再灌流傷害
過少グラフト
抗体関連拒絶反応
2. 移植後6ヶ月までに出現することが多い病変
急性拒絶反応
外科的合併症
感染症
薬物性・代謝性肝障害
GVHD
3. 移植後6ヶ月以降に出現することが多い病変
原疾患再発(ウイルス性肝炎,自己免疫性肝疾患)
慢性拒絶反応
de novo
自己免疫性肝炎・特発性移植後肝炎
"非特異的"な変化