京都大学医学部附属病院 病理診断科・病理部
Department of Diagnostic Pathology, Kyoto University Hospital

指導責任体制・設備・診療・研修概況 2024年10月28日現在

研修医募集はこちら

教 授挨拶、および当科での病理専門研修を希望される方々へ   診療科長 羽賀 博典

   haga
人体の 組織のみについて,その外貌形態のみを究め,ただそれだけにて事足るとなすが如きは,進歩的なる病理解剖学 の本領に非ず
藤浪鑑(ふじなみ・あきら)著 『剖検示説』(1923年)より

病理診断を学ぶ上での注意点を1つだけあげるとするなら、上記の藤浪初代病理学教室の言葉に集約されるのではないかと思 います.病理医に求められるのは、ただ所見を述べるだけでなく、臨床情報や他の検査結果を総合して診断する能力です。常 に臨床医や患者のことを考えて診断することです。


組織標本や細胞診標本から何がわかるかは、臨床情報や他の検査情報との関連性を学び、さらには、関連性を自ら見出すこと によって初めて明らかになります。 病理医は標準的な病理診断法の習得 に加え、腫瘍生物学の知識に基づき、形態学的変化、細胞生物学的変化、治療戦略の背景にある臨床症候(病歴)を理解し、 必要に応じた免疫組織化学等の追加 検討を加えて診断を行う必要があります。日々の診断サインアウト(ディスカッションを交えた病理診断報告書の作成)で は、与えられたものに満足することな く、文 献検索、クリニカルカンファレンス、電話相談など、自ら症例から学ぶ姿勢が求められます。

病理専門研修の基幹病院である京都大学医学部附属病院では,それぞれの専門領域を持つ指導教官による日々の診断指導に加 えて,毎週の教育コース,多くの学 術誌,海外短期研修,国内外の招聘講師など様々なリソースから学ぶことができます。当科の管理する京大病院での70万件 余りの診断データベースは診療・研 究の両方で多いに活用されています。

連携病院では,自らが最初に診断を下す機会が増えます。責任の範囲も広がり,カンファレンスや病理診断科の運営について より積極的な関与,よりスピーディな対応を求められます。

積極的に学会発表の経験を積み、(発表するだけでなく)英文・和文で論文を投稿しましょう。

専門医(病理専門医・細胞診専門医・分子病理専門医)の取得は専門医としてのスタートであって、ゴールではありません。 大学院受験は専攻医3年目以降で可能です。基礎医学の理解,統計解析の理解などは将来の診断能力を高める上で必要となっ てきます。大学院時代には診断する機会が多少減るかもしれませんが,診断そのものについてより深く考え学ぶ機会としてほ しいと思います。

最終的には、臓器別サブスペシャリティを確立し、自ら発信できる専門領域を持つことを目指してください。病理医それぞれ が発信できる領域を持つことは、病理診断学の面白さを実感し、診断病理分野全体のレベルアップと相互の協力体制を深め、 さらに後継者の育成につながっていきます。

指導担当教員:2024年10月現在
教授:羽賀  博典(部長・基礎病態学講座病理診断学分野)
南口 早智子(副部長・病理部)→藤田医科大学教授へ
准教授:藤本 正数(病理診断科)
助教:竹内  康英(病理診断科)
助 教:寺本 祐記(臓器移植医療 部)
助 教:伊藤 寛朗(病理診断科)
助 教:辻 健太郎(クリニカルバイオリソースセンター
病 院助教:家村 宜樹  編集中

教授・診療科長・部長
羽賀 博典(は が・ひろのり
新潟高等学校普通科卒(昭和60年)
京都大学医学部医学科卒(平成03年)
博士(医学)(京都大学, 平成16年)
死体解剖資格 (
第6650号,平成07年12月11日)
日本病理学会 病理専門医(第1970号,平成09年07月28日) 研修指導 医 学術評議員 地方選出理事 近畿支部支部長
日本病理学会 分子病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医 (第2038号,平成15年12月19日)評議員
所属学会等:日本病理学会、日本臨床細胞学会、日本肝臓学会、日本移植学会日本肝移植学会、日本リン パ腫学会
専門分野:肝移植病理,リンパ球増殖疾患,病理情報,小児病理
受賞:国際病理アカデミー日本支部・病理診断学術奨励賞 (2007年)
内線:3520(教授室),4946(秘書室)
   
准教授・副部長
南口 早智子(み なみぐち・さちこ)6月30日で退職、藤田医科大学へ
京都教育大学附属高等学校卒業
滋賀医科大学医学部医学科卒業(平成06年)
博士(医学)(京都大学, 平成12年)
サウスカロライナ大学留学
死体解剖資格 (第6805号,平成08年12月13日)
日本病理学会 病理専門医(第2125号,平成11年07月21日) 研 修指導医 学術評議員 分子病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医(第1747号,平成12年12月22日)  評 議員
所属学会:日本病理学会・日本臨床細胞学会・日本婦人科腫瘍学会・日本胎盤学会・日本腎臓学会
専門分野:細胞診,胎盤病理,消化管病理,肝胆膵病理,病理解剖
内線:3488(病理診断室)

准教授
藤本 正数(ふ じもと・まさかず
学校法人大阪医科薬科大学 高槻高等学校卒業
熊本大学医学部医学科卒業(平成16年)
博士(医学)(京都大学,平成27年)
シカゴ大学留学
日本病理学会 病理専門医(第2822号,平成22年) 研修指導医 学術評議員 分子病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医(第2855号)
International Committee for Dermatopathology – Union Européenne Médecins Spécialistes 認定 国際皮膚病理専門医(平成27年12月)
所属学会:日本病理学会、日本臨床細胞学会、日本皮膚病理組織学会、日本リンパ腫学会
専門分野:皮膚病理,血液病理
内線:
3488(病理診断室)

助教
竹内 康英(た けうち・やすひで
愛知県立旭丘高等学校卒業
京都大学医学部医学科卒業(平成22年) 
博士(医学)(京都大学, 令和02年)
日本病理学会 病理専門医 研修指導医 学術評議員 分子病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医
所属学会:日本病理学会・日本臨床細胞学会・日本癌学会・脳腫瘍病理学会・USCAP・AACR
専門分野:腫瘍生物学・脳腫瘍
受賞:日本病理学会近畿支部 学術奨励賞(2014年, 2020年)
内線:3488(病理診断室)

助教
寺本 祐記(て らもと・ゆうき
大阪星光学院高等学校卒業
京都大学医学部医学科卒業(平成22年)
博士(医学)(京都大学)
ロチェスター大学 (NY) 留学
日本病理学会 病理専門医 研修指導医 学術評議員 分子病理専門医
日本臨床細胞学会 細胞診専門医
所属学会:日本病理学会・日本臨床細胞学会
専門分野:泌尿生殖器病理

特定助教
伊藤 寛朗(いとう・ひろあき)
灘高等学校卒業
京都大学医学部医学科卒業(平成24年)
マギル大学(カナダ)留学
日本病理学会 病理専門医 学術評議員 分子病理専門医
日本病理学会 細胞診専門医
所属学会:日本病理学会・日本臨床細胞学会
専門分野:眼病理、呼吸器病理

特定助教
辻 賢太郎(つじ・けんたろう)
筑波大学附属駒場高等学校卒業
東京大学医学部卒業(平成28年)
博士(医学)(自治医科大学)
日本病理学会 病理専門医 分子病理専門医
日本病理学会 細胞診専門医
所属学会:日本病理学会・日本臨床細胞学会
専門分野:呼吸器病理

主な設備

討議用顕微鏡システム+顕微鏡撮影装置
        10人用 Nikon, 5人用 Nikon, 3人用×2 Olympus , 2人用×5 Nikon
       
110インチ相当マルチモニ ター (55インチ x 4) x 2台 + ハイビジョンカメラ,他
蛍光顕微鏡 (FISH, Opal多重蛍光) Olympus
切り出し室第 一管理区分
病理業務システム
        インテック 病理・細胞診検査業務支援システム Expath III (2016.5〜)
        FileMaker Pro 自作システム [1999〜]
PCR コバス4800システム(EGFR遺伝子変異, ROS1遺伝子変異検出)→ほぼ停止
自動免疫染色装置:ベンタナ ベンチマーク ULTRA 3台、ライカ ボンド 2台
HE染色標本作製装置 (HE 600),特殊染色装置 (ベンチマーク SS)
液状検体細胞診検査システム:ThinPrep ホロジック, BD シュアパス™ 液状細胞診システム
バーチャルスライドシステム:浜松ホトニクス NanoZoomer S360,Webサーバ
無線LAN (Wi-Fi):KUINS 3
・実験室:医学部F棟3階
        多重蛍光顕微鏡システム
NEWMantra quantitative pathology imaging system (PerkinElmer®)
        細胞培養,他
標本保管:外来棟地下への拡張を予定.
    病理部(書架式,中央診療棟2F)・第三臨床研究棟3F・総合解剖センター

        ディープフリーザー,パラフィンブロック,ホルマリン浸漬臓器
・第三臨床研究棟1F
    がんゲノム解析室 NEW(稼 働準備中)

診療件数

京大病院内の組織診断・細胞診件数

2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
組織
10,937
11,081
11,440
11,944
12,411
12,795
12,749
12,385
12,771
13,253
13,515
13,362
13,634
12,613
13,107
12,855
13,366
(内迅速)
929
910
991
986
1,029
928
973
941
1,015
1,074
1,021
978
952 933
958
794
802
細胞
14,003
14,576
14,542
14,122
14,532
14,401
14,013
13,412
13,368
12,705
11,969
11,231
10,868
9,364
9,394
9,544
9,971
(内迅速)
508
474
477
527
578
583
546
535
561
576
564
647
590
596
528
644


病理解剖件数:(総合解剖センター)
解剖
2007
2008
2009
2010
2011
2012 2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
院内
31
39
43
43
30
42
29
29
28
23
30
46
34
31
19-1
23
18
院外
6
9
8
3
5
9
2
10
11
8
4
5
3
3
4
6
2

遺伝子検査(G番号):2016年5月から採番開始 
EGFR 遺伝子検査(生検,細胞診,血漿), FISH (1p/19q, ALK, EWSR, SYT 等) は院内で実施。
EBER ISH, HER2 DISH, MDM2 DISHは院内報告で,組織診断(H番号)のみで報告.
BRAF, KIT, RAS, MET, MSI, NGS, MyChoice, PD-L1 IHC は院外へ外注。
遺伝子
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
院内
317
585
829
1,060
877
1,001
1,000
1,002

電子顕微鏡検査(外注)
腎臓・心臓 電顕
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
院内
59
63
83
96
100
121
135
129
150
137
152
127
143
135


・その他: 
    保険医療機関連携による病理診断(テレパソロジー含む): 4施設 (2017年07月現在)
    衛生検査所からの検査受託(医療機関指定): 2社 (2017年07月現在)
    院外コンサルテーション・免疫染色受託(研究支援扱い): これまでに100施設以上から受託
    中央病理判定(臨床研究)

教 育コース(週1回, 水曜日)
各 診療科との定期カンファレンス
 剖検CPC,定期の生検・手術例検討,キャンサーボード(週1回,火曜日)
・病理診断講習会(ボ ストン-京都,2年に1回⇒休止中)

初期臨床研修医(ローテーター)受け入れ状況
H26年度以前:同一期間5名程度までを受け入れ(平均3か 月)
H27年度以降:原則,病理医志望者を受入 (1年次, 1ヶ月; 2年次, 3ヶ月以上)

実績

・H22年度 16名 (1年次, 1名;2年次, 15名)
・H23年度 13名 (1年次, 2名;2年次, 13名)
・H24年度 15名 (1年次, 受入停止;2年次:男11名,女4名)
・H25年度 17名 (1年次, 男2名,女1名;2年次, 男8名,女6名)

・H26年度 17名 (1年次、男1名;2年次、男8名、女6名,後期2名)
・H27年度 2名 (1年次,0名; 2年次,男2名)
・H28年度 2名(1年次, 0名; 2年次, 男1名,女1名,後期1名)
・H29年度 8名(1年次, 0名; 2年次, 男4名,女4名)
・H30年度 10名(1年次, 0名; 2年次, 男6名,女4名)
・H31年度   5名(2年次,男3名,女2名)
・R02年度 4名(2年次,男1名,女1名)
・R03年度 12名(2年次、男9名、女3名)
・R04年度 5名(2年次、男3名、女2名)
・R05年度 7名(2年次、男6名、女1名)
・R06年度 

京都大学医学部病理研修プログラム(連携病院開始を含む)病理専攻医の受け入れ状況

・H22年度 2名男1名,女1名)
・H23年度 2名
男2名
・H24年度 4名男4名,女0名+1 名(女1名)
・H25年度 0名(男0名) + 1名(男1名)

・H26年度
 2名男1名,女1名+2 名(男2名)
・H27年度 5名
男3名,女2名
・H28年度 4名(男3,女1
・H29年度 2名(女2)
・H30年度 5名(男1,女4)
・H31年度 5名(男3,女2)
・R02年度 2名(男2)+1名(男1)
・R03年度 2名(男1,女1)+1名(男1)
・R04年度 6名(男5,女1)
・R05年度 2名(男2)
・R06年度 1名(男1)

研修期間
       原則3年連携病院での研修を含む

病 理専門医試験受験結果
   2002年〜2012年:29 名受験, 29名合格 (100%)
   参考:全国平均合格率 約81% (約0.8人/大学/年)
   2013年,2014年は受験者なし,2015年は1名合格
   2016年は当科で研修した8名全員が合格(1回の試験では過去最多)
   2017年の受験者なし
 2018年は5名受験,5名合格(京大プログラムから転出の2名を含む)
 2020年は転出も含め全員合格 (2/2)
 2021年3名合格
 2022年7名合格
 2023年2名合格
   2024年2名受験

病理専門研修医待遇:

  院外診療応援 (切り出し・組織診断・病理解剖) による収入あり
      国内学会出張費補助 (1年次〜)
            日本病理学会総会(旅費・滞在費)
  海外出張費補助 (2年次〜)
          米国カナダ病理学会(旅費・滞在費)
  連携病院研修:原則として3年次以降
  病気・怪我・その他障害・妊娠・出産・育児・配偶者の移動等による研修休止・内容変更は随時対応

採用時の注意点
    1.
専攻医・医員は現在のところ大学院生を兼ねることはできません京都 大学大学院医学研究科の規定による)
     論文執筆・臨床研究は専攻医でも可能です
    2. 他診療科の診療は原則として認めません(時間外も含む)
    当科の内規による  [連携病院では各病院の規則に従う] 

   

その他問い合わせ先:pathology[at]kuhp.kyoto-u.ac.jp (秘書:井尻)